2022年4月11日月曜日

【再掲】タマデン「桜新町停留所附近」S23ころ

 ■「世田谷の100年」に…

昭和23年ころの、玉電の桜新町停留所附近の写真が掲載されていた。

S23100

画面右手が、この後の昭和27年ころに削平された、品川用水路の築堤。
電車の左、カンバン建築のあるところが、現・サザエさん通りとのT字路。
したがって、この電車は停留所に停車中と思われる。

【参考映像】現況写真@2021/11/20

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1/5000帝都地形図「二子」戦災復興院/S21・刊〔抜粋〕
赤矢印は、推定される、撮影位置/方向を示す。

品川用水は、境付近で玉川上水から分水された、元々は、現・三鷹市、調布市(入間川養水〔旧・仙川用水〕)から分水された、品川区内の灌漑用水であったが、

 

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東京都水道歴史館・蔵「玉川・神田両上水平面図 」東京府水道掛/(推定)M13ころ
https://www.ro-da.jp/suidorekishida/content/detail/K0268 抜粋

昭和初期以降は、現・三鷹市新川から下流の現・品川区方面への通水は閉止されており、

品川用水沿革史編纂委員長倉本彦五・編「品川用水沿革史」品川用水普通水利組合/S18・刊

p.265は、この地の昭和16年11月末の情景を以下のように記している。

…道は相州街道筋の玉川電車通りに出る。水路漸く淺くなつて水乏しく遂に空堀となる。そして随處塵芥の堆積と崖の崩壊を見るやうになった。もう人家は櫛比して立派な市街地と化してゐる。神道十三派の中の神習教大教廳前*を過ぎて櫻新町停留所へかゝると、水路は往還より稍々上り。堤塘を以て保護されてゐる。何處から湧くのか混濁した水がゆるやかに流れてゐる。此の邊は豪雨毎に氾濫して組合を苦しめたことが記録に散見するも、今はそんな様子は微塵も見られない。

*現・桜神宮
 世田谷区新町321番地(官報2262〔1920年02月20日〕号p.347
 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2954375/3 参照)
 したがって、実際には神習教大教廳は、桜新町停留所よりも用水の下流の水路沿いに位置する。

 

【追記】

この、新町の比較的低い築堤のある水路は、多年にわたって、トラブルメーカーだったようで、

●前掲「沿革史」p.188に、以下のように書かれている。

…組合を苦しめた世田ケ谷新町の水路氾濫に依る改修及び其の他の工事に就いて附記する。同所用水路、主として玉川電車新町停留所附近は、増水の都度溢流堤塘を越えて軌道及び歩道を浸し、交通支障を来すこと屡々であった。これは此の堤塘が相当距離に亙って盛土であるため、一朝豪雨の際は氾濫を防ぎ難かったからである。殊に大正十三年十二月上旬の浸水は甚だしく、住民怨嗟の的となり世田ヶ谷警察署の注意を受くるに至った、叉、同十四年五月八日東京府内務部長より水路浚渫並に護岸修築方の示達があり、これと前後して駒澤町の改修方陳情もあつたので、組合は翌年六月同所の護岸工事を行ふこととした。その見積書は

一金七百七拾八圓参拾四銭也
品川用水荏原郡駒澤村世田ケ谷新町地内
護岸堤防修繕工事 延長四十八間 深六分 巾平均三分
此立坪 八坪三合
同所土留柵 延長四十間六分五厘

となってゐる。これに依って大概の規模は判るが、一部分の修繕工事としては多額の費用を要したものであった。併し修理後も完全に氾濫を防ぐに至らなかったので、昭和七年又もや大改修を行った。此の時の改修は氾濫防止の爲め、主として水路敷の掘下げ大浚ひに力が注がれた。元来此のの場所は古くから厄介なころと見えて、明治十三年十月の文書に「常用水土手、荏原郡世田ケ村新町往還(築土手場所)修繕着手候處、用水洩水有之尚修繕に差閊侯間。本日中に洩水の箇處取繕」云々(西村宗直氏蔵・戸越村山路治郎兵衛差出書付)と見えてゐる。

●また、この築堤部は、これに先立つ大正12年9月1日の関東地震によって

・世田ケ谷區新町二丁目三三五(1文字欠カ)番地先が
 延長九十七間 高五尺二寸 にわたって崩壊し
 その補修費として7750円を要した

という(同p.184)

【余談】この地の大正中ころの植生

鳥居龍蔵が主宰していた武蔵野會の機関紙「武蔵野」Vol.2(同會/T07.10・刊)のpp.43-46に

伊吹高峻「駒澤村の植物」

と題する記事があり、その中で、以下のように、この築土手近辺の大正中期の姿を伝えている。

品川用水も高臺の中央を流れ人工的堀割なるを以て岸高く兩岸僅かに羊歯の數種類あるのみ、又堤防に「にはとこ」の多き事注意すべし叉トリアシショウマの白花を總生したるヤブクワンザウの炎ゆるが如き又目を引く岸の兩壁に羊歯類の外ゼニゴケ、ジャゴケ等の膠着したる叉スギゴケ、ヘウタンゴケへ等あるも珍物に非ず、

 


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